やったこと

大林組と岩谷産業は2026年6月18日、液化水素(マイナス253℃)の気化過程で従来は捨てられていた冷熱を建物空調・冷凍設備に活用するための熱交換技術を開発し、建物への適用実証を開始した。関西大学と協働して2022年10月から研究を進め、約3年半かけて安定した冷熱回収を実現する技術を確立した。

具体的な手順・工夫

研究の出発点 液化水素は圧縮ガスより密度が高く、大量輸送・貯蔵に適している。液化水素を常温ガスに戻す気化過程で大量の冷熱が発生するが、従来はこの冷熱は活用されず大気中に放散されていた。冷熱の有効利用は液化水素サプライチェーンのエネルギー効率向上に直結する課題である。

技術開発の核心課題 冷熱回収の過程では、二次冷媒が凝固してしまうという技術的障壁があった。沸騰と凝固が同時に生じる複雑な伝熱現象が安定した冷熱回収を妨げていた。

解決策:二重管構造の熱交換器 大林組・岩谷産業・関西大学の共同研究チームは、二重管構造によるシンプルな熱交換技術を開発した。この設計により、二次冷媒の凝固が生じても安定した冷熱回収が継続できることを確認した。熱交換器の構造をシンプルに保つことで、実際の建物設備への組み込みやすさも確保している。

実証の場所と対象 研究所内の燃料電池供給用液化水素の気化過程を対象として実証を実施した。気化で生じる冷熱を回収し、建物空調・冷凍設備へ供給する系統を構築した。

カスケード活用の設計 液化水素(マイナス253℃)からの冷熱は温度段階別に複数用途へ「カスケード方式」で活用できる。最低温度域から段階的に温度帯を上げながら、異なる設備(冷凍倉庫・空調・製氷など)に順次供給する設計を検証中である。

得られた結果

研究所内での実証において、液化水素気化過程の冷熱量の約90%を回収することに成功した。回収した冷熱を建物空調等に利用することで、空調用電力削減を確認した。

他社が参考にすべき点

液化水素の受け入れ設備を持つ企業(水素ステーション運営者・液化水素を原料とする工場・水素発電所周辺施設)にとって、気化プロセスで発生する冷熱は「今まで捨てていたエネルギー」である。冷熱回収設備の追加導入により空調電力を削減できる可能性があり、冷凍・冷蔵設備を多く持つ食品工場・物流倉庫が特に高い効果を得られる候補となる。カスケード方式の段階的温度利用は設備構成の柔軟性も高い。