実装のポイント
名古屋大学の松田亮太郎教授とマツダが取り組む「モバイルカーボンキャプチャー(MCC)」は、エンジン車の排気ガスに含まれるCO2をリアルタイムで回収・蓄積する車載技術だ。大気中のCO2(濃度約0.04%)を直接回収するDAC(Direct Air Capture)と異なり、排気ガスという高濃度CO2源から直接回収するため、エネルギー効率が格段に高い。
具体的な手順
CO2回収の技術メカニズム
- 吸着材の活用:「多孔質構造のゼオライト」を吸着材として使用。ゼオライトの微細な孔がCO2分子を選択的に捕捉する
- 排気ガスとの接触:エンジン排気ガスをゼオライト層に通過させ、CO2を吸着
- 温度スイングによる分離:ゼオライトを加熱することでCO2を脱着(分離)させる
- タンクへの圧縮蓄積:分離したCO2を圧縮してタンクに蓄える
- 燃料として再利用:回収したCO2を合成燃料(e-fuel)や藻類バイオ燃料の原料として再利用する構想
大気中CO2直接回収との比較優位性
| 項目 | 排気ガス回収(MCC) | 大気中直接回収(DAC) |
|---|---|---|
| CO2濃度 | 約10〜15% | 約0.04% |
| 必要エネルギー | 相対的に低い | 膨大 |
| 実装場所 | 車両搭載 | 大型設備 |
得られた結果
- CO2回収率:排気ガス中のCO2の20%を回収(現時点の技術水準)
- 課題:ゼオライトタンクの搭載スペース確保、CO2蓄積後の車両重量増加、回収CO2の陸上インフラでの受け取り体制整備
実用化に向けた課題
松田教授が指摘する主要課題:
- 吸着材の耐久性・再生可能回数の向上
- 給油・整備時にCO2タンクを「回収・交換」するインフラの整備
- 現在の排気ガス20%回収率のさらなる向上
技術的には既存のガソリン・ディーゼル車への後付け改造(レトロフィット)も理論上は可能で、エンジン車が脱炭素化の「ブリッジ技術」として機能する可能性を示している。